ゾーリンゲンって言葉を耳にしたことはありますか?
ネットショップなどではゾーリンゲンの三徳包丁とかのタイトルで販売されていたりします。
しかし、調べて見たところ、「ゾーリンゲン」はなんと刃物のメーカーでも販売代理店でもないのです!
ナイフと言えばゾーリンゲン
出典;PUMA
「ナイフと言えばドイツのゾーリンゲン(Solingen)」
子供の頃、親戚のおじさんは刃渡りが25㎝ほどあるナイフを誇らしげに見せてくれました。
ハンドルにはそれまで見たことがなかった鹿角が使われていて、センセーショナルな思いに駆られたのを今でも覚えています。
「何に使うんだろ…?」と、とっても疑問に思いながらも、子供心の好奇心はゾーリンゲンと言ういかにもドイツ語っぽい響きの言葉を記憶の中へ刷り込んでいきました。
そして、つい最近までその「ゾーリンゲン」はドイツのナイフメーカーのブランドだと疑いもしませんでした。
実は町の名前
ゾーリンゲン(Solingen)とはドイツ西部のノルトライン=ヴェストファーレン州に属する人口は約16万人都市です。
ゾーリンゲン市が創立されたのは1374年のこと。
日本で言えば室町時代の話ですね。(笑)
ゾーリンゲン市は当時から、長く高級刃物製造における活動の中心地として栄えてきました。
現在でも上質の刃物を作る街として知られ、ハサミやカミソリなどの理髪用品をはじめ、キッチンや高い完成度が要求される手術用ナイフなどが製造されています。
ゾーリンゲンは確かに街の名前ですが、そのネームバリューから一つのブランドと捉えて良いのかもしれませんし、実際そのようにも使われているのが事実です。
主なブランド
ゾーリンゲンに本拠を置くの主なメーカーは以下の通り。
ツヴィリング・J.A.・ヘンケルス
創業は、1731年。
創業者はヨハン・ペーター・ヘンケルス(Johann Peter Henckels)で、社名の中の「J.A.」は彼の名前の略なのさそうです。
「ツヴィリング」と「ヘンケルス」のブランドを持っていますが、アウトドアナイフブランドと言うよりは、家庭向けのキッチンナイフやハサミ、キッチン用品、事務用ハサミと言った商品を中心として展開しています。
日本では「ヘンケルス」のほうが有名ですよね。
PUMA
出典;PUMA
PUMAと言ってもスポーツ用品のPUMAではありません。
正式な社名はプーマ・ヴェルク。
創業は、1769年。
ツヴィリング・J.A.・ヘンケルス社より若い会社ではありますが、それでも250年以上続いている老舗です。
第二次世界大戦の後、狩猟家であったオズワルド・フランケベルクと言う人物がプーマ・ヴェルク社に入ります。
これを機に狩猟、フィッシングなどのアウトドア用のナイフの製造が始まり、プーマの新しい主力商品となりました。
現在は、ハンターナイフやアウトドアナイフを中心に理容店向けのカミソリやキッチンナイフなどを取り扱っています。
出典;PUMA
BOKER
ベッカー社は1829年にヘルマンとロベルトにより操業され、サーベルの製造を開始したのが起源とされています。
翌1830年には週に2000丁を生産する規模へと成長。
今からおよそ200年も前に100人を超える従業員を抱えていたと言うから驚きです。
出典;BOKER
後にヘルマンは後にニューヨークにH.ベッカー&Co.を設け、ロベルトは1865年に、カナダとメキシコにベッカー社を創立。
1869年になると、H.ベッカー&Co.はゾーリンゲンに程近い場所に移転し、ハインリッヒ・ベッカー&Co. を設立し、カミソリ、ハサミ、ポケットナイフの製造を行っていました。
BOKERのナイフは厳格な品質管理を信念として、常に歴史と伝統を守り高品質を追求してきためか海外での評価が高く、海外需要の高まりにこたえる形で製造の比重をハサミやカミソリからポケットナイフへと移して行きました。
現在では生産されるナイフの半数がアメリカへ輸出されているそうです。
出典;BOKER
実はゾーリンゲンで作っていなかった!
グローバル化が進んだ現代では当たり前のことですが、ゾーリンゲンブランドもまた例外ではありません。
生産コストの関係から、中国などで生産しているものも多くあります。
ツヴィリング・J.A.・ヘンケルスなどは日本法人を岐阜県関市に設立しています。
いずれも、ドイツの自社基準で製造しているというものの、やはり中華製のものの評判はあまり良いものではありません。
まとめ
冒頭で述べした、鹿角のナイフですが、僕の記憶の中にある形のものを見つけることは出来ませんでしたが、PUMAのものだった可能性が高いですね。
ゾーリンゲンに本拠を置く刃物メーカーは、ブルドッグブランド、ハーバーツ、キッシングクレーン、リヒャルツ、ジャーマンアイ、ウベルトゥス、ハーバーツ、ヘン&ルースターなど他にも多く存在しています。
今回取り上げた3社のように有名ブランドになる前に消えて行ったメーカーもたくさんあります。
どの業界でもそうですが、栄枯盛衰の中から生き残ると言うことは簡単なことではないようですね。