トヨタ「シエンタ」の販売が絶好調ですね。
今や、一つ上のクラスのミニバンであるノア、ヴォクシーの販売台数を凌いでいます。
いったい、その人気の秘密は何なのでしょうか?
概要
出典;トヨタ自動車
シエンタの2019年の販売台数は、前年比117.9%増しで販売台数は11万880台でした。
今や、プリウス、ノートに続く第3位の売れ行きとなっています。
さて、その躍進の理由はどこにあるのでしょうか?
売てるシエンタ
シエンタの売れた理由について様々なことが噂されています。
例えば発売当初に感じていた「違和感のあったエクステリアを見慣れてきた。」とか、「2列シートのFANBBASEが加えられたから…」とか、言われています。
また、「ダウンサイジングの波がミニバンに押し寄せてきた」と言う声もあります。
しかし…
ほんとうにそうなのでしょうか?
少し横道にそれますが、ここで世帯収入の動向を見て見ましょう。
日本人の平均所得動向
下記のグラフは1985-2015までの世帯平均年収を示したものです。
出典;厚生労働省
上のグラフには掲載されていませんが、2017年では全世帯平均の年間所得金額(世帯全体の金額。年金や保険も含む)は551万6000円となっています。
2007年世帯平均年収は563万800円となっています。
2007~2017年の間で、世帯平均年収が約12万円下がっていますが、パーセンテージから考えるとほぼ横ばいと考えてもよいでしょう。
しかし、10年間、12万円下がった状態がが続くと考えた場合、120万円の差額が生まれることになります。
新車で購入して、10年間乗り続けると言う方も少なくないのではないでしょうか?
そうした場合、単純に考えると120万円上乗せして、新車が購入できることになります。
加えて、10年前の消費税は5%でした。
現在は10%!
2018年、12月、内閣府は戦後最長と言われた「いざなぎ景気」を現在の好景気の長さが超えたと発表しました。
にもかかわらず、所得は下がり、消費税は倍になっています。
平均的な家庭への負担は大きくなっているのです。
車両価格
続いてチェックするのは車両価格です。
ヴォクシーの車両価格推移と、ライバルとなりそうな車両の価格をチェックしてみましょう。
2007年式ヴォクシー
出典;トヨタ自動車
2007年ヴォクシーのの新車販売価格はいくらだったのでしょうか?
2007年と言えばヴォクシーがフルモデルチェンジした年です。
そのヴォクシーですが、新車販売価格は(モデル末期の価格まで含め)199~318 万円となっています。
当時のヴォクシーには5人乗り仕様のTRANS-Xが一番安く199万円~。
3列シート8人乗りの標準グレードのXが203万円~でした。
2020年式ヴォクシー
出典;トヨタ自動車
それでは、2020年式ヴォクシーです。
現行ヴォクシーがモデルチェンジしたのは2014年1月のことです。
新車価格は約255~344 万円。
5人乗り仕様のTRANS-Xは廃番となっています。
一番安いのは8人乗りの標準グレードXで255万円~でしたが、2020現在グレードXは廃止され、エントリーモデルはZXの8人乗りで281万3800円(税込み)~となっています!
ノアにはまだXグレードがあり、そちらは8人乗りタイプで255万8400円(税込み)。
2017年式のヴォクシーのエントリーモデルが203万円~で買えたに対し、2020年式のヴォクシーのエントリーモデルは281万円以上出さなけば買えなくなっています。
ノアのエントリークラスでさえ、255万円以上します。
車は年式により装備も変わってきますので、同じ車名だからと言って一律に比べることは出来ませんが、それにしてもこの値上がり幅はちょっと驚きですよね。
2020年シエンタ
それでは2020年式シエンタの新車販売価格は、 約181~252 万円となっています。
最低価格の181万円の車両は2列シート5人乗り標準グレードのFANBASE-Xとなっています。
では、ヴォクシーと同じ3列シートはどうなのでしょう?
価格は標準グレードのXで185万200円~となっています。
N-BOX
出典;ホンダ
続いて、軽四で一番売れているN-BOXの現行モデルの価格を見て見ましょう。
2020年のN-BOXの価格は約141万円~213万円。
売れ筋のカスタム2WDのエントリーモデルの価格は194万1500円(税込み)となっています。
フリード
出典;ホンダ
では直接のライバルとなるフリードの価格はどうでしょう?
価格は約200万円~304万円。
エントリーモデルの6人乗りのグレードBが199万7600円(税込み)~で、7人乗りはグレードGからの設定となり、価格は上がって216万400円(税込み)~となっています。
シエンタが売れている本当の理由
では、なぜシエンタが今売れているのか考えてみたいと思います。
軽四と比べてお買い得感がある
ファミリーユースに人気の高い、N-BOXをはじめとする軽スーパーハイトワゴンもモデルによっては車両価格が税込みで約200万円~の設定になっているグレードもあります。
維持費を考えなければシエンタのエントリーモデルの方が安いうえ、3列シートをチョイス出来たり、積載量が圧倒的に有利だったりするメリットがあります。
また、ボリューム感があるため、軽に乗っているママ友にドヤ顔できるなどのメリットもあります。
ライバル車よりお得
シエンタの直接的ライバルとなるのは、今のところホンダフリードくらいのものでしょう。
フリードと比べてもやはりシエンタの方が割得感が大きいようです。
まず、フリードの7人乗りはセカンドグレードからの設定で価格は約216万円~。
シエンタの7人乗りの185万円~。
その差31万円!
値段だけ見ればかなりシエンタの方が割安です。
商業利用として選ばれている
選択の多様化が叫ばれる中、自動車メーカーは販売車種の絞り込みを進めています。
かつて、企業の商用車として人気の高かったカローラは3ナンバーとなり商用車として選ばれることはもうないでしょう。
昨今は両極化が進み、軽四か3ナンバー車と言う流れになっています。
中間の5ナンバー車両は希少価値となりつつあります。
ヴィッツ(現行ヤリス)やフィットは商用車としても人気が高いですが、カスタマーを乗せたり、大きな荷物を積んだりするにはもう少し大きな車と言うことになります。
そこで目を付けられるのがシエンタと言うことになるのでしょう。
タクシー需要
また、5人乗り仕様が発売されたことにより、タクシーとしての需要も増えているようです。
シエンタと同じシャーシを有するジャパンタクシーは従来のコンフォートよりも車両価格が約100万円も高いのだそうです。
そこでタクシー会社が目を付けたのが、シエンタ。
シエンタには、タクシー専用車両のようにLPGエンジンの設定はありませんが、走行距離の少ない都心のり用であれば、ハイブリッド車両でも採算が取れるそうです。
また、シエンタに標準積載されているガソリンエンジンをLPG仕様に変更してもジャパンタクシーより安く導入できるのだとか…。
タクシーなど商用車の需要は大きいですから、販売台数の底上げには大きく貢献しているものと考えられます。
割高になったミニバン市場
出典;トヨタ自動車
核家族化に伴い3列シートの不要論もささやかれていますが、そもそも核家族化は今に始まったことではありません。
3列シートミニバンの火付け役となったのは、同タイプとして初めてFFを採用したステップワゴンでした。
ご存知の通り、ファミリー向け車両として大ヒットしたわけですが、主な購入層が同居世帯だったわけではありません。
当時はアウトドアブームも手伝い、4人家族だけれど、荷物が沢山詰め、フルフラットシートになり、室内高があり、特別な時は実家の両親や親類、友人らと同乗を楽しむことが出来ると言ったメリット、そして新しいスタイルが受けたのだと思います。
決して、同居世帯や3人以上子供が居る世帯が購入してヒット車となったわけではありません。
そして今では、アルファードやヴェルファイアなどをはじめ、人気の3列シートミニバンを独身男性が所有しているケースも多くあります。
つまり、実のところはみんなおおきなミニバンに乗りたいのだと思います。
しかし、上記の車両価格を見て頂ければわかる通り、ネックとなり始めたのは価格だと私は考えています。
まとめ
今、シエンタが多くのファミリーに選ばれている訳…
やはり、一番は経済的理由が挙げられるのではないでしょうか。
つまり、ノアやヴォクシーと言った今までファミリーユースの代表格だった車の価格が高騰。
さらに、軽四の価格も高騰。
ライバル車の価格も割高。
そんな中、リーズナブルな値段設定でそれなりに車格があり、室内は広く、荷物も沢山詰める、シートバリエーションに優れ、車中泊にも使えるなど、お買い得感を満載した車がたまたまシエンタしかなかった…と言うことなのだと思います。
5人乗り仕様のシートアレンジバリエーション
出典;トヨタ自動車
結局のところ、シエンタは経済的にも使い勝手的にも優等生で、今の時代にジャストフィットしたため、大きく販売台数を伸ばしたのではないでしょうか…。